組込ソフトウェアエンジニアから見たレーダー照射問題

(2/2追記) 下記の文面には事実誤認がたくさんあります。また、このエントリは「このような件がもしソフトウェアのバグかもしれないとして解析を依頼されたら困るだろうな」との仮定の下で書いたものあであって、本件がソフトウェアの不良によって引き起こされていると私が思っているわけでは全然ないです(可能性として絶対にないとは言えないとは思いますが限りなく低いと思っています))

 

エースコンバットでは、敵の近くに居ると「ピッピッピッ」というような音がして、それを無視して飛んで敵にロックオンされると「ピーー」という長い音が鳴り響き、その後すぐにミサイルが飛んでくる。平和なはずの日本海で哨戒機が哨戒任務をしているだけだったのに、その音が聞こえたということならそりゃびっくりするだろう。機械が壊れてんじゃないのか? とまず思うはずだ。

 

 

自分が哨戒機に積まれている機器の納入メーカーだったり、哨戒機のメンテナンスをする立場だったり、自衛隊が持つ多数の飛行機たちの管理を行っている部署の偉い人だったりの立場になって考えてみてほしい。なにせ敵が居ない状況で相手にロックオンされたことを示す警報が機内に鳴り響いたというのだからビビる。ソフト屋的にはまず当該事象についてバグチケットが切られ、そのチケット内で下記について可能性を考えるような感じである(僕はそんなシビアな機器のソフトの開発に関わったことはないので正確にはわからないのだが)。

  1. 何かしらソフトにバグがあって判断をミスって、ピー音が連続するような状況になってしまったのではないのか
  2. リアルタイムOSの複数のタスクのややこしい排他制御がバグって異常な動作が発生してしまったのではないか
  3. 電磁波や放射線によってビット化けしたのにその後正しく回復できずに変な動作になってしまったのではないか

そして外部要因として下記のようなことが考えられるはずである。

  1. 何らかの外部の条件が、たまたま偶然、ピー音が連続的に鳴るような状況になった。
  2. 実際に韓国がレーダーを照射した

5以外が原因だったとするなら、これは割と深刻である。哨戒機側のレーダー探知機が信用できないということになるからである。早急に真因を突き止め、二度とこのようなことが起こらないように対策をする必要がある。

おそらく1〜3に関しては自衛隊機のログデータなどからかなり分析を進めて、哨戒機側機器の原因は現在見つかっていないのだろう(もちろんより深い調査を進めないとわからない原因もあるはずで、哨戒機側不具合の可能性がなくなったわけではない。でもそこにコストをかける判断をする前に4.5.を確認すべきという話になるだろう)。

しかし上記の4.5.を検証するにあたっては近くに居た韓国船がどのような電波をどのように放射していたかを確認しなければならない。5.だったら哨戒機側の機器の故障ではないのでラッキーなんだけど、4.だったら原因究明が困難そうな気がする。

 

 

そんなわけで確認していろいろな人達の思惑が入り混じった結果、韓国側から得られた情報は下記のようなものであった。

  • (A) 火器管制レーダーは使用していない。
  • (B) 日本側の無線は、音が悪くて聞き取れなかった。韓国側からも無線で何度も呼びかけたが日本からの応答はなかった
  • (C) 日本側は150mと言っているが、実際には哨戒機は60mの高度まで低空飛行して威嚇していた
  • (D) 問題の本質は低空飛行による威嚇であり、火器管制レーダーの使用の可否ではない

ちょっと待てよ。Aの情報が正しいとすると、紹介器側のレーダー探知機が誤動作していたという結論になり、その誤動作の原因究明のためにさらなる詳細情報を韓国に求めることとなるだろう。それはそれで正しいプロセスである。しかしBとCは、技術的にはレーダーとは全く別だけど、より重大な問題が発生していた可能性を示している。もともとの問題は、日本側のレーダー探知機が故障していないかどうか、バグっていないかどうかという観点だったのに、それとは全然違う機器にも問題があったということなのである。

Bは、友軍の間での無線が伝わらないという、これまた本当であれば根本的にまずい問題である。

Cは、日本側が、自衛隊機の計測機器から得られるデータ等から把握している高度と、実際の高度が全然違う、ということなので、高度計に不具合があることになり、こちらはもっともっと深刻な問題である。

だから、韓国側から出てくる情報が全て真実だったとすれば、日本の自衛隊機は「レーダー探知も間違うし、無線での会話も全然できないし、高度計すらバグっているというオンボロなので、さっさと買い替えるべき」というようなことになってしまう。

 

 

そんなことは有り得るのか? いやないと思うんだけど。そしてそもそもこのバグチケットの問題だった「レーダー照射されてないかもしれないのにピー音がした」というのはどう決着するんだよ。Dは日韓の問題の本質かもしれないけどこのバグチケットには関係ないだろ。だから最初のバグチケットの担当者は、

「あー、BとかCとかDはこのロックオンされた問題とは直接関係ないんで、別のバグチケットを切るんで、そっちでやりとりしてね。もうこれ以上有用な情報も出てきそうにないし、CとかDの発言から、韓国側が本当に火器管制レーダー使用していた可能性も十分にあるってことなので、このチケットはクローズしますね」

という決着にするしかないのではないか。これが要するに下記の発表である。

 

韓国との協議打ち切り 防衛省が最終見解 レーダー照射音公開 - 毎日新聞

「韓国側に、相互主義に基づく客観的かつ中立的な事実認定に応じる姿勢が見られないため、これ以上実務者協議を継続しても真実の究明に至らないと考えられることから、協議を続けていくことはもはや困難だと判断した」

 

実務者が知りたかったのはあくまでも「レーダー照射があったか、なかったか」 「火器管制レーダーではなかったとすれば他にどのようなレーダーや電子機器を動かしていたか」であって、「低空飛行で威嚇した」「脅威を受けた者が、脅威と感じれば、それは脅威である」とかそんな話はどうでもいいのである。そりゃ打ち切りもするわ。

 

 

…って思ってたら、「レーダー照射はなかった」という声明が韓国側から出てきていますね。

本当だとすればやっぱり日本側の機器の誤動作あるいは乗員の認識間違いということになるので、それはそれで何が原因だったの? 再発防止どうするの? っていうところが悩ましいところです。迷宮入りってことで再現待ちというステートになるのでしょう。

www.yomiuri.co.jp

 

それにしても意味わかんないんですよね。レーダー照射してないんだったら、「問題の本質は、駆逐艦の上空150メートル、距離500メートルまで近づいた「哨戒機の低空威嚇飛行」と指摘」って言う言い訳は別に必要ないでしょ??  レーダー照射してないんだから、関係ないことなんです。「レーダー照射と関係ないけど、お前ら威嚇飛行してるのおかしいだろ!!」って言うならいいんだけど。

 

哨戒機の低空威嚇飛行が、「レーダー照射の問題」の本質だというのを本当に信じるなら、つまり、韓国側の言う低空威嚇飛行をしなければ、レーダー照射問題(実際にはレーダー照射されていないのに哨戒機側のピーー音がなるような事態)は起きなかった、ということです。哨戒機側にとっては、韓国籍の船に近づくと、機器が不調になる、ということになり、なおさら韓国の船がどのような電波や光線を発射しているのかを知る必要が出てきてしまいます。

 

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初出のとき、上記の(A)〜(D)のところに ol の type属性を使ってアルファベットの順序付きリストにしており、自分の環境では見れていんたのですが、標準的な環境ではnormal.cssでlist-style-typeが指定されていて、エントリで指定したtype属性が効いていませんでした。全然意味の通ってないエントリになっていてすみませんでした。