アクセル踏み間違い事故(いわゆるプリウスロケット)に見るハインリッヒの法則

製造業で働いたことがある人ならハインリッヒの法則について聞いたことがあるだろう。ハインリッヒの法則という名前を憶えていない人でもいわゆるヒヤリハットは聞いたことがあるはずだ。

 

 ハインリッヒの法則(ハインリッヒのほうそく、Heinrich's law)は、労働災害における経験則の一つである。1つの重大事故の背後には29の軽微な事故があり、その背景には300の異常が存在するというもの。

 

ハインリッヒの法則 - Wikipedia

 

ところでこの大型連休の前後にアクセル踏み間違いが原因と思われる死亡事故の報道があった。

これにこの法則をあてはめて考えると、たとえば死亡事故や重傷を負うような事故は重大事故で、重傷者が出ないまでもコンビニにちょっと突っ込んだり追突されたりするというのが軽微な事故という感じだろうか。ここで最近の重大事故の頻度がたまたま日本全体で気が緩んでいたとかではなく、1ヵ月に1回くらいの頻度だというのであれば、アクセル踏み間違いによる軽微な事故は実は毎日のように起こっているということになるのだ。

だから、誰かが乗っている車は、いつ急発進してきてもおかしくないというような意識で生きることが大事のような気がしていた。

 

 

そんな中、「踏み間違い事故の発生件数が多いのは若者と老人であるが、踏み間違いによる死亡事故の発生件数は圧倒的に高齢者に偏っている」という記事を見かけて、その数字に少しびっくりした。

 

【踏み間違いによる事故の発生件数(2015年)】
・16~24歳 1080件
・25~29歳 513件

   :

・60~64歳 346件
・65~74歳 1001件
・75歳以上 1032件
・合計    5830件

 

【踏み間違いによる死亡事故の発生件数(2015年)】
・16~24歳 0件
・25~29歳 1件

   :
・60~64歳 2件
・65~74歳 16件
・75歳以上 34件
・合計   58件 

 

踏み間違い事故が一番多いのは若年層、だが死亡事故につながる割合は高齢層が突出! データから読める意外な真相とは? | clicccar.com(クリッカー)

 

ここから、踏み間違いによる、事故の件数:死亡事故の件数 の比率を出してみると、
25~64歳までを対象にした場合、2172:8 = 約340: 1 であり、これはいかにも最初に引用したハインリッヒの法則の 300:30:1に極めて近い数字になっているのだ。ハインリッヒの法則すごい。
(ハインリッヒの法則における300は無傷であった場合なので、車の場合には対物事故などが相当すると思う)

しかし65~74歳では1001:16 = 62:1 、そして75歳以上では1032:34 = 30:1の比率となってしまう。

 

 

この一つのデータから一般に拡張するのは雑だとは思うが、おそらく

  • ハインリッヒの法則の数字は高齢者にあてはめるときは修正しなければいけない
  • それも2倍とかではなく5倍とか10倍のオーダーで

ということだろう。

おりしも政府が最近
「できれば元気な人は70歳まで働き続けてほしい、いや、そうしないと日本が破綻するぞ」
という宣言を出したところであり、工場などでの65歳以上の雇用は急増するはずである。これまで300:30:1として安全衛生の教育を行ってきた現場の意識改革が必要となる可能性が高まっていると思う。